良いマーケティングとは消費者の欲求を深く理解し、その欲求を満たせるものであると思います。
そのため、まずは人の欲求について理解することが重要です。

そこで今回はアメリカの心理学者アブラハム・マズローによって提唱された、人間の基本的欲求には5つの階層があるとする理論、通称「マズローの欲求段階説(欲求5段階説ともいいます)」について解説します。

Abraham-Maslowマズロー教授はこんな人
画像出典:veteranstoday.com

非常に有名な理論ですのでどこかで聞いたことがあるかもしれません。
「自己実現理論」とも呼ばれ、自己啓発系のお話では常連のトピックだと思います。

マズロー教授によれば、人間の基本的欲求には5つの階層があり、低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲するようになります。以下、それぞれの階層について説明します。

maslows_hierarchy_of_needsマズローの提唱する人間の欲求5階層

1. 生理的欲求(Physiological needs)

食事・睡眠・排泄など人間が生きていくのに必要な本能的な欲求。
人は食べたり寝たりしなくは死んでしまいます。お腹が空いて死にそうなんて状態の人がお洒落なバッグが欲しいなんて望むことはないのです、絶対に。
満足いくまで食べれるということが人には最も優先度の高い根源的な欲求です。

2. 安全欲求(Safety needs)

安全性、経済的安定性、健康状態の維持など、安全・安心・安定した暮らしがしたいという欲求です。
原始時代であれば、食料が確保された次に求めるのは雨風や猛獣から身を守る住みかということになります。

上記の2つの欲求は生活の中でも最も基本的な欲求です。
現在でも世界の3人に1人は戦争に巻き込まれていると言われています。また、世界の9人に1人が飢餓に陥っています。最も基本的な欲求ですら満たされない人も世の中には多く存在しているなか、戦争もなく経済的にも豊かな日本で暮らす私たちは、ほとんどの人がより高次の欲求を求めることができる、とても幸せな国民なのです。

3. 社会的欲求(Social needs)

生理的欲求と安全欲求が十分に満たされると、自分が社会に必要されたい、集団に帰属したいという他者との関わり合いを求めるようになります。愛や友情、反対に孤独や社会不安など、我々が社会生活の中で得る感情にはこの欲求が大きく関係してきます。

4. 尊厳欲求(Self-Esteem)

承認欲求ともいいます。自分が周りから価値ある存在と認められたい、他人から尊重されたいと求める欲求です。人は社会的な成功やステータス、地位や名声などを求めますね。
この階層には2段階があり、他者からの尊敬という低次のレベルと自分自身を評価するという高次のレベルに分かれます。他人からの名声を求めるなんて三流、他者に惑わされず自分で自分を評価できて二流(この理論上ですよ)ということです。

5. 自己実現欲求(Self-actualization)

自分が自分らしくありたい、本来の自分を実現したいという欲求です。他人から承認されたいという欲求を超えた先にありますので、ある種の無償性を含んでいるのも特徴です。
「自己実現」というと啓発セミナーではよくありそうな話ですが、人間の欲求の最も高次元、それも他人からの称賛を超えた先にありますので、実際にたどり着くことは生半可なことではないと個人的には考えています。

少し脇道にそれますが、「The Giving Pledge(寄付誓約宣言)」というのをご存じでしょうか。
マイクロソフトのビル・ゲイツ夫妻と世界最高の投資家であるウォーレン・バフェット氏という世界一のお金持ち二組がはじめた寄付啓蒙活動で、ビル・ゲイツ夫妻は全財産の95%を、バフェット氏は全財産の99%を寄付すると宣言しています。
最近ではFacebook創始者のマーク・ザッカーバーグ夫妻もFacebookの株式を99%寄付すると宣言しました。

彼らは世界中の人々の中でも五指に入る富も名声も極めた人たちです。
もうこれ以上の名声はいらない、お金ももうまったく必要ないという域に達すると、どうやらみんな慈善活動へと走っていくようです。すべてを得た人がたどり着く先は人類の幸福なのです。
富も名声も極めた彼らくらいになってようやく「無償性」という域に達することができるのではないでしょうか。自己実現の道は険しいですね。
その領域に足を踏み込めることはなさそうなのであくまで想像するしかないのですが。

余談ですがマズローは晩年、5段階の欲求階層の上に、さらに以下の2つの上位階層を付け加えています。[Maslow 1970]

6. 知識と理解への欲求(desire to know and understand)
7. 美ニーズ(need for beauty)

自分らしくありたいという欲求のあとには「もっとこの世界を知りたい」という哲学的な欲求が続き、最終的に人は「美」というもっとも洗練されたニーズを求めるというのです。
世界の理(ことわり)の先にある美となると何でしょう?そうなるともう神の領域かもしれませんね。

かなり古い理論ですので学術的にはすでに様々な批判や修正もされているかもしれません。
しかし、マーケティングや経営学の基礎として、経営層やインテリ層の多くに知られているよく浸透した理論ですので覚えておいて損はないでしょう。