消費者の行動は本人も気づいていない無意識の力に大きく影響されています。
無意識がどのようにマーケティングに影響しているのか、少しずつ学んでいきましょう。今回は「プライミング効果」について解説します。

先に受容した刺激によって無意識に記憶が促進される効果のことを「プライミング(priming)」と呼びます。
もう少しわかりやすく説明すると、事前に与えられた情報が、そのあとの行動や決断に影響を及ぼすという心理的な作用のことを意味します。

例えば、果物の話を事前にしておくと、そのあと「赤」という言葉から何が思い浮かぶかを尋ねたときに「リンゴ」や「イチゴ」などの果物を回答する可能性が高くなります。
これは事前に提示された果物の情報によって、果物に関する記憶にアクセスがしやすくなるため、意識せずに果物に関する連想が導かれるからと考えられています。このような心理作用や脳の働きがプライミング効果です。

プライミングは商品とは直接関係のない日常の手がかりであっても、商品購買に影響を及ぼすことが研究の結果示されています。(Berger & Fitzsimons [2008])

プライミング効果が企業のマーケティングに影響を与えた事例をひとつご紹介します。

1997年にNASAのマーズ・パスファインダー (Mars Pathfinder)という探査機が7か月の飛行を終え、火星に着陸しました。マーズ・パスファインダーが撮影した約1万6000枚の写真や、大量の大気や岩石のデータはその後の火星探査に大きく貢献しています。
ニュースはマーズ・パスファインダーの功績を大きく報じたことでしょう。

その陰で、このときスニッカーズやM&M’sなどのブランドで有名な米大手製菓企業の「マース(Mars)」の売り上げが急増したと言われています。

Mars_productマース社商品(画像出典:Pinterest

※日本では企業名を「マース」と表記するようですが英語では「Mars」でスペルは火星と同じ

マーケティングにおいて、知覚的もしくは概念的に関連した手がかりをあらかじめ与えることでブランド記憶にアクセスすることが容易になり、ブランド情報をより処理しやすくなります。
テレビの報道などで耳した「Mars」というワードが記憶の片隅に残っており、そのあとスーパーなどに買い物に行った際には無意識のうちについつい「Mars」の商品に手が伸びてしまったのだろうと考えられます。

プライミング効果はマーケティングだけではなく、日常の様々な場面で役に立ちそうですね。

例えば、誰かにある選択肢を選んでほしいとき、事前に手がかりとなる関連した情報を与えることで相手に気づかれないうちに巧みにその選択肢へと誘導することができるかもしれません。

無意識の力とは面白いものですね。