今回は世界最大級の広告賞「カンヌライオンズ(Cannes Lions)」で2部門を受賞したマーケティングの成功事例についてお話します。

チョコレートの消費量世界一であるルーマニアで、超ロングセラーのチョコレート菓子ブランドが起こした国を巻き込む大騒動となったキャンペーンについてです。

ルーマニアでは定番のROMチョコが行ったキャンペーン

「ROMチョコ」は1989年のルーマニア民主化以来、パッケージに国旗をモチーフとしたデザインで多くの国民に愛されてきました。

ROM Chocolate(画像参照:Global Voices

しかしロングセラー商品というものはどこの国でも「若者離れ」が課題となるもので、アメリカから来た輸入ブランドに若者のシェアを奪われ、ROMチョコは「古くてダサいお菓子」として衰退の危機にありました。

この危機的な状態において、ROMチョコの製造メーカーが行った施策は実に大胆でユニークなものでした。

なんと

「最近の若者はアメリカの輸入チョコが大好きだから、若者受けする星条旗柄に変更します!」
とROMのパッケージデザインをルーマニア国旗のデザインからアメリカの星条旗をモチーフとしたデザインに変更するとROMの社長がニュースで発表したのです。

ROM Promotion(画像参照:AdGang

この愛国心を踏みにじる行為にルーマニア国民たちは憤慨し、パッケージ変更に対する非難が続出しました。
ニュース番組でもこのパッケージ変更が議論の的になったり、FacebookやTwitterなどのSNSでは、「なんで、そんなことするんだ」「アメリカにチョコまで支配されてしまうなんて嫌」と炎上状態になったようです。
星条旗デザインの商品に対しての不買運動やデモまで起きたとか。

そして、これらの国民総出の批判・非難に対してROMの製造企業がとった行動はルーマニア国民をさらに驚がくさせるものでした。

一夜にして、パッケージのデザインを元のルーマニア国旗デザインに戻し、アメリカ国旗デザインへの変更は「ジョーク」でありキャンペーンの一環であったことをTVコマーシャルやWEBサイトなどで宣伝したのです。

ROM Promotion2(画像参照:AdGang

実は消費者からの炎上は最初からすべて想定内で仕組まれていたものでした。ROMが実施したキャンペーンはルーマニア国民の愛国心に火をつけることで伝統的なブランドが自分たちの国民的な財産であったことを消費者自身に理解させることに成功しました。

さて、キャンペーン全体について説明している上記の動画によれば、このキャンペーンの結果はどうだったかというと、、、

  • キャンペーンのリーチ率はルーマニア国民の実に67%に到達した。
  • 何千というコメントがSNSで投稿され、Facebookのファンは4日間で20000人増加し、わずか6日間で従来より300%増加した。
  • 「ルーマニアで最も人気のあるチョコレートである」というブランドイメージも79%増加した。
  • 結果としてチョコレート菓子の市場で圧倒的な20%ものシェアを獲得した

上記のような大成功を収めたのでした。

「帰属意識」は人を突き動かす

「ROMチョコ」の事例は、人をわざと煽ることで話題性を高め拡散させることを意図した「炎上マーケティング」の成功事例として語られることがあります。たしかにリスクを恐れない大胆かつ痛快なキャンペーンは称賛に値するものですが、炎上マーケティングなる手法は一歩間違えば企業に壊滅的な打撃を与えかねない大変リスクの高いものです。

それよりも、この成功事例から注目すべきは愛国心などの「帰属意識」を刺激されると人の行動は活発になるということでしょう。

例えば、オリンピックやサッカーのワールドカップなどが始まると普段はそのスポーツに興味がない人でさえ、一緒になって応援することがあると思います。

「帰属意識」は国籍に限らず、出身地や学校、企業、組織など、自分がそこに所属しているという意識のことです。やさしく言い換えると「仲間意識」とも呼べます。

この「帰属意識(仲間意識)」のツボのようなものを押されるとひとは思わず動いてしまうのです。

ルーマニアの事例やオリンピック、ワールドカップなどを考えてみると、この帰属意識のツボは万国共通の特性であると言えるようですね。

【参考資料】
『人を動かすマーケティングの新戦略「行動デザイン」の教科書』博報堂行動デザイン研究所[著] 國田圭作[著]

AdGang