6月17日(土)『第9回AKB48選抜総選挙』の投票結果が公表されました。
指原莉乃さんが3連覇を達成し、2位渡辺麻友さんは卒業を発表、20位の須藤梨々花さんはアイドルがまさかの結婚を発表と、今年も世間をにぎわすニュースがいくつもうまれた模様です。

気づけばもう9回目になるのかと、特にアイドル好きというわけでもない私でさえ社会現象とも呼べた第1回、第2回の頃を思い返して少々懐かしい気持ちにもあるのですが、同時に栄枯盛衰の激しい音楽業界、芸能界において9年以上もこれだけの話題性を持ち続けることに驚嘆すら覚えます。

マーケティングの世界においてもAKBグループの戦略には参考になるものが多くあり、事実日経BP社より刊行されている『最新マーケティングの教科書』の2017年度版には昨年世界中で一大旋風を巻き起こした「ポケモンGO」に続くトピックとして、AKBグループの特集記事が掲載されています。

最新マーケティングの教科書2017

ただのアイドルグループだとあなどるなかれ、ヒットの裏に隠されたマーケティング戦略について考察してみましょう。

AKB48のブームはすでに終わったのか?

社会現象とも呼ばれた初期の選抜総選挙の頃と比べるとAKB48の全盛期の勢いはもうなくなったと考える人も多いかもしれません。当時は前田敦子さん、大島優子さんがまだ在籍しており、壮絶なエース争いが大きな話題になりました。

テレビの視聴率という点ではどうやら落差もあるようなのですが、そもそもテレビを見る人の数も減少していますのでどこまで信用してよいものかわかりません。
そこで、毎年の総投票数の推移を見てみましょう。選抜総選挙の投票権はCDの購入者や有料の会員になると付いてくるようですので、お金を払ってでも投票したい人に限定されるため人気のバロメーターと考えられます。

選抜総選挙の総得票数の推移

こうしてグラフに表してみると、2016年こそ若干のへこみはあるものの、それ以外は毎年右肩上がりで堅調に総投票数が伸びているのがわかります。今年は更に数を伸ばし、過去最多の338万票という数字になりました。

つまり総投票数で考えると、AKBグループ全体では落ち目にあるどころか着実に成長しているわけです。

AKBグループは、秋葉原のAKB48を筆頭に、名古屋の栄を拠点としたSKE48、大阪難波のNMB48、福岡博多のHKT48…とグループを拡大してきました。メンバー数は今や国内だけで300人を超えており、ここにJKT48(ジャカルタのグループ)などの国外グループや乃木坂46などを加えるとなんと総勢500人を超えてきます。

単純に考えるとAKB48の話題性が薄れてきたように感じるのは、グループが多くできたことによって人気が分散されたからだと言えるのではないでしょうか。

AKBグループの地域戦略

選抜に選ばれたメンバー16名の在籍グループを集計してみると、AKBが4名、名古屋のSKEが5名、大阪のNMBが2名、博多のHKTが2名、新潟のNGTが3名と分散し、見事に地域戦略が成功していることがわかります。
特に速報では1位がNGTのメンバーであったりと、まだできたばかりのNGT48が躍進し、メンバーが3人も選抜入りしました。新潟における地域戦略もばっちりはまっているようですね。

1位 指原莉乃(HKT48)
2位 渡辺麻友(AKB48)
3位 松井珠理奈(SKE48)
4位 宮脇咲良(HKT48)
5位 荻野由佳(NGT48)
6位 須田亜香里(SKE48)
7位 横山由依(AKB48)
8位 惣田紗莉渚(SKE48)
9位 岡田奈々(AKB48)
10位 北原里英(NGT48)
11位 高橋朱里(AKB48)
12位 白間美瑠(NMB48)
13位 本間日陽(NGT48)
14位 古畑奈和(SKE48)
15位 高柳明音(SKE48)
16位 吉田朱里(NMB48)

ルーマニアのマーケティング成功事例の記事でも説明しましたが、人は「帰属意識」を刺激されると積極的に行動するようになります。

自分の住んでいる地域のグループを応援したい、応援している子を選抜メンバーに入れたいというファンの意識をうまく利用して、他の地域のグループと競わせることで、総得票数(=売り上げ)の拡大を図っているのです。

そして、AKBグループの戦略はただの地域戦略というだけではありません。

地域グループの中でも最も人気のあるメンバーはAKB本店の選抜メンバーになったり、兼任したりすることで、本店のAKB48にはグループの中でも選りすぐりのメンバーが集まります。このようにして、AKB本店の売り上げが落ちにくいという仕組みになっています。

反対に本店AKB48の人気のあるメンバーを地域グループの方に派遣することで地域グループを活性化させるということも行っています。(1位の指原さんはHKTとAKBの兼任です)

実に合理的なシステムではないでしょうか。
全く進まない国の地方振興策よりもはるかに地域活性化に貢献してるのではないかとすら思えてきますね。
9年以上も選抜総選挙が続くことはダテではありません。
背景にはこのようなマーケティング戦略が隠れていたわけです。

さて、書き始めた当初は考えてもいませんでしたが、まだまだ書く内容があり、このままだと長くなるので残りは後編に続きます。

後編ではまた別の視点から、AKBグループ戦略についてマーケティング的な考察をお届けします。

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参考資料