データ分析でみるAKBグループ戦略~前編~に引き続き、『第9回AKB48選抜総選挙』の熱が冷めやまぬ間に、AKBグループのマーケティング戦略への勝手な考察を続けます。
マーケティングの視点で世の中を見てみると面白い発見があるものなのですよ。

さて、考察を続けるにあたって、その前にひとつ新しい知識を学びましょう。
まずは「プロダクト・ライフサイクル」について解説します。

プロダクト・ライフサイクル(製品ライフサイクル)

新しい製品が市場の投入されてから、次第に売れなくなって市場から撤退するまでの一連のプロセスを表したものをマーケティング用語でプロダクト・ライフサイクル(製品ライフサイクル)と呼びます。
プロダクト・ライフサイクルは一般に「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の四つの段階に分類されます

product lifecycle画像参照:IT pro

1. 導入期
製品を市場に投入した直後です。まずは製品を世間のみんなに知ってもらわなければならないので「認知度を上げる」、「販売経路を拡大する」というのが導入期のミッションです。

2. 成長期
製品の普及が進み始め,市場の拡大とともに売り上げも大きく拡大する段階。ライバルもどんどん参入して増えてくるので、ライバルとの差別化が必要になります。

3. 成熟期
市場が飽和状態となり、売り上げの伸び率も鈍化して、いわゆるピークを迎える時期です。
一般的にはピークを迎えれば衰退していくものなのですが、てこ入れ策がうまく成功すればピークの時期も衰退スピードも遅くさせることができます。

4. 衰退期
需要が減り始め,売上が急激に減少する段階。市場からの撤退を検討する時期です。

上記が一般的な製品ができてから撤退するまでのプロセスと言われています。

さて、前置きが長くなりましたがようやく本題です。
さっそく前編でも使用した『AKB48選抜総選挙』の総得票数の推移にプロダクト・ライフサイクルの考え方を当てはめてみてみましょう。

選抜総選挙の総得票数の推移

大きく投票数を伸ばしている2015年までと比較して、2016年、2017年の直近2年ほどは投票数の伸び率は鈍化して横這いになってきています。現在はアイドル戦国時代と呼ばれて市場もかなり成熟してきているので、ここから更に大きく伸びるということはなかなか難しいのではないかと思います。

プロダクト・ライフサイクルの考え方を当てはめると、AKB48が結成されたのは2005年のことらしいので、およそ2005年~2010年が「導入期」、2010年~2015年までが「成長期」、そして2015年から現在は成長も止まってくる「成熟期」に入ってきているのではないでしょうか。

つまりこの時期に必要になる戦略は、何らかの「てこ入れ策」をとってピークや衰退を遅らせることにあると考えられます。

おいおい人を製品(モノ)と同じに扱うなという声も聞こえてきそうですが、コンサルタントとして働く私自身がそうであるように「人が商品」であることは普通にあり得ることです。

ちなみに「モーニング娘。」のように一度衰退を迎えたかにみえて見事に人気が復活したケースもありますので4つの段階がすべてに当てはまるというわけではありません。

AKBグループのライバル戦略

いよいよ分析も核心に入っていきますが、総合プロデューサーの秋元康氏がなぜ凄いのかがわかるはずです。

2015年以降、現在はAKBグループも「成熟期」に入ってきていると考えられるのですが、まだ著しく伸び率も高かった「成長期」の2011年に別のあるアイドルグループが誕生しています。

AKB48の公式ライバルとしてデビューした「乃木坂46」です。

Nogizaka46画像参照:ORICON NEWS

孫悟空とベジータ、ジョジョとデュオ、ナルトとサスケ、ケンシロウとラオウなど、王道と呼ばれるマンガの主人公には魅力的なライバルがいるように、ライバル関係にあるアイドルグループを作ってお互いを競わせるという戦略を展開し始めました。

果たして、このライバル戦略をうまくいったのでしょうか?

「Googleトレンド」という、どのようなキーワードが検索されているのかや特定のキーワードの検索回数の推移をグラフで確認できる、プロのデジタルマーケターの間では知らない人はいない便利なツールがあるのですが、「乃木坂46」というキーワードで検索された回数の推移を見てみましょう。

検索回数=人々の話題になっている数ですので、人気のバロメーターと考えられます。

Google Trend - Nogizaka46Googleトレンドで「乃木坂46」を検索

図の見方としては、検索の絶対数ではなくピークの検索回数を100とする相対評価になります。
グラフをみると2011年の結成以来、現在まで右肩上がりに検索数を伸ばし続けてきているのがわかります。
つまり順調に人気が高くなっているということです。

乃木坂46が成功したことにより、「坂道シリーズ」として2015年には「欅坂(けやきざか)46」という姉妹グループも結成されました。

それでは、直近1年間の「AKB48」と「乃木坂46」「欅坂46」の検索トレンドを比較してみましょう。
赤線がAKB48、青線が乃木坂46、黄色線が欅坂46です。

Google Trend - Comparison 3 groupGoogleトレンドで「AKB48」「乃木坂46」「欅坂46」を比較

6月になると選抜総選挙があるためAKB48の検索ボリュームが跳ね上がりますが、それ以外の時期では本家のAKB48よりも乃木坂46の方が多く検索されているのがわかります。
結成してまだ間もない欅坂46もAKB48を超えた月もあり、差し迫る勢いで検索数が増えているようです。

強いライバルがいれば本家も頑張るしかありませんし、ライバル側も本家あってのライバルなので、どちらかが人気を保っている間は簡単には衰退しないでしょう。

このことからAKBグループのライバル戦略は現在のところ見事に成功していると思います。

乃木坂46の結成はまだAKB48が人気絶頂で急成長を続けていた6年前の2011年ですよ。
その頃に停滞をしてくる「成熟期」を見越して次の一手を打ってきた先見の明はさすがとしか言いようがありません。

どれだけ人気のあるアイドルでも時間の経過とともにやがて飽きられてくるものですが、選抜総選挙やじゃんけん大会など次々とカンフル剤を投入して話題を作ってきたAKBグループが次にどんな戦略をとってくるのか気になりますね。

前編後編にわたってデータ分析をしながらAKB戦略について語ってきましたが、本人もまさかAKBでこんなに書くことになるとは思っていませんでした(笑)。

マーケティングを学ぶと世の中の見方が変わってきます。
だって世間は戦略や広告、プロモーションに満ち溢れていますからね。

目に見えているものの陰にはどのような戦略があるのか気づくようになると、今よりももっと世の中が楽しく思えてくるに違いありません。