現在は「モノよりもコトの時代」だと言われています。
「消費」という言葉を加えて「モノ消費よりもコト消費」と言うこともあります。

製造業やサービス・小売り業など、業界を問わずビジネスの世界では盛んに使われている言葉なのですが、「モノよりもコト」は現代のマーケティングを理解するうえで最も需要なキーワードの一つです。

google_trend_kotoComsumption「コト消費」Googleトレンド調べ(2017/7/15)

世間からの注目度を図るために利用するGoogleトレンドというサイトで「コト消費」と入力してみると、2017年の2月をピークにして2016年の夏ごろから急激にGoogleで検索された回数が上昇しています。まさにいま注目のワードであることがわかりますね。

まずは言葉の意味から解説します。
「モノ(物)」とは、一言でいえば車やカバン、ソファーなど、商品ソノモノのことです。
それに対して「コト(事)」とは、その商品やサービスによって得られる体験のことを意味します。

つまり「モノよりもコトの時代」というのは、人々が「商品の所有」という目に見える価値よりも「その商品やサービスを購入したことで得られる体験」という目には見えない価値をより重要視する時代であると言い換えることができます。

なぜ「モノよりもコト」なのかわかりやすく理解するため、時代を追って解説します。

高度経済成長⇒市場の成熟化

戦後、日本では高度成長期をむかえ「三種の神器(冷蔵庫、洗濯機、白黒テレビ)」や「3C(カラーテレビ ・クーラー・自動車)」などの新しい商品が次々に登場して人々の生活を彩るようになりました。

『ALWAYS 三丁目の夕日』という素晴らしい邦画があるのですが観たことはありますか?
戦後の高度成長時代を物語の舞台としているのですが、貧しいながらも活気あふれた当時の文化を知ることができるハートウォーミングな下町人情物語です。邦画の中ではシリーズ通して大好きな映画作品の一つです。

映画を観たことがある人はイメージが湧きやすいと思いますが、この頃の人々の願望はまだ「車がほしい」とか「カラーテレビがほしい」というような、商品そのものを所有したいというものでした。
高度経済成長期は「大量生産・大量消費」と呼ばれる新商品を出せばモノが売れる時代でしたので、企業側もTVコマーシャルなどのマス・マーケティング(CMや新聞広告などの一般大衆に向けた画一的なマーケティング手法)を中心としたプロモーションが主流であったと言われています。

しかし、高度経済成長やバブルと呼ばれた時代も終焉を迎え、現在では以前のようにはモノが売れない時代へと変わってきました。市場は成熟し、私たちの周りには様々な商品が溢れています。

かつては人々の憧れであったカラーテレビも、今ではシャープのAQUOSやパナソニックのVIERA、東芝のREGZA、SONYのVRAVIAなど多くのブランドがひしめき合ってしのぎを削り合っています。
価格競争も激化していますので今では大型テレビでさえも比較的手ごろな値段で購入することができるようになりましたね。

このように市場が成熟して需要よりも供給が上回り、モノが溢れている時代では機能や品質だけを訴求しても、基本的にはどれも高機能・高品質ですので他の商品と大した差別化はできません。
機能的な価値を提供するだけでは消費者に選ばれにくくなってきているのです。

機能や品質による差別化が機能しなくなると、単純に価格が安い方が有利という価格競争になってきます。
価格競争に巻き込まれていくということは企業にとっては泥沼の戦いへとはまっていくことを意味します。

そこでマーケティングの戦略も、価格競争を避けるために機能や性能について勝負をする「モノ売り」を辞めて、消費者の「理想的な生活や体験」を訴求する「コト消費」戦略へと変わってきました。

ドリルを買う人が欲しいのは穴である」というマーケティングの格言がありますが、ドリルを買った人が欲しかったのはドリルそのものではなく、”穴”を開けた先に得られる体験や価値なのです。

「コト消費」時代の目指すべきテーマは「Priceless(プライスレス)な体験」です。

コト消費の時代:プライスレスな体験を

『Priceless お金で買えない価値がある。買えるものはマスターカードで』というマスターカードのキャッチコピーは有名ですね。特に2013年の「里帰り篇」のCMがクオリティも高くて私は好きです。

MasterCard「里帰り篇」

このキャッチコピーはまさに「モノよりもコト」という言葉を象徴している気がします。

このブログの管理人である私は以前100店舗以上のショップが出店するショッピングモールのプロモーション担当者をしていたことがあります。
「モノよりもコト」のプロモーション事例として、ショッピングモールのブランディングを行っていた自身の経験をもとにショッピングモールの事例についてお話したいと思います。

ショッピングモールのコア・ターゲットはファミリー層です。それもまだ小さな子供がいるヤング・ファミリー層が中心となります。
ショッピングモールではいつも様々なイベントを開催していることはみなさんご存じだと思います。
土日や祝日には歌手やお笑い芸人を招いてショーを開催したり、子供向けの工作イベントを開催したり、またクリスマスやバレンタイン、ハロウィンなど、季節に合わせて館内装飾を変更したり、大小様々な催事を行っていますね。

これらのイベントにかかる費用は販促予算というところから出費をするのですが、なぜショッピングモールではこれだけのお金をかけてでもイベントや館内装飾に力を入れるのでしょうか。

それは、

買い物だけではなくショッピングモールで楽しい時間を過ごしたというプライスレスな体験(思い出)をお客さんに提供したいからです。

例えば、母の日の工作イベントで子供と一緒になって作ったプレゼントを見るたびにご両親はショッピングモールに行ったあのときの楽しい体験を思い出すようになります。
また、大好きな歌手のステージを観たという記憶を思い起こすたびにどこで観たのかという情報も一緒になって想起されることでしょう。

これは以前紹介した「ジルマンの感情理論」にも通じていると思いますが、このように楽しい体験(思い出)によってそのショッピングモールが好きという感情が高まり、また行きたいという気持ちが生まれます。

楽しい体験とブランディングは密接に関係しているものなのです。

最近のショッピングモールはアパレルやグッズなどの店舗だけではなく、子供たちが職業体験ができるエンタテイメント施設の「キッザニア」や、最新テクノロジーを通じてアートなど創造的な体験ができる未来型遊園地の「チームラボアイランド」、ウルトラマンテーマスポットの「ウルトラマン CLUB」など、ファミリーで楽しめる強力なコンテンツを持った企業を誘致することに非常に力を入れています。

kidzania画像参照:キッザニア

ラゾーナ川崎のように有名アーティストのイベントに強みを持ったショッピングモールもありますね。

現在はインターネットで簡単に商品を購入することができる時代です。
スペースの制限がないネットの方が、商品はずっと多いですし、24時間いつだって購入できます。
ただお店が集まっていて買い物ができる場所ならばネットショップでもいいわけです。

そのためショッピングモールでは生き残りをかけて、ただの「いろいろなお店があって買い物ができる場所」から「思い出に残る楽しい体験ができる場所」へとコンセプト・チェンジを図ろうとしているのです。

今回は「モノよりコト」という現代のマーケティングには欠かせないキーワードとショッピングモールでの事例について解説しました。
次回はこの「モノよりもコト」がどのようにマーケティングに影響を及ぼしているのか、そして「モノよりもコト」を実践している世界的に有名な企業の成功事例について解説し、さらに理解を高めていきたいと思います。