以前、別の記事で現代のマーケティングを理解するうえで最も需要なキーワードの一つである「モノよりもコトの時代」について解説をしました。

▼「モノよりもコト」の意味をご存じない方はコチラ
「モノよりもコトの時代」ってどういうこと?

記事の中では、消費者の価値観が「商品の所有」という目に見える価値よりも「その商品やサービスを購入したことで得られる体験」という目には見えない価値をより重要視するように変わってきたということについて歴史の流れと共にご説明しました。

今回は「モノ(機能的価値)よりもコト(体験的価値)」をより深く理解するために、国民の生活スタイル自体が一つのブランドとなっている北欧を代表するある企業の事例をご紹介します。

スウェーデン発グローバル企業とあこがれの北欧スタイル

sweden-image画像参照:北欧トラベル

北ヨーロッパのスカンディナヴィア半島に位置するスウェーデン王国は人口約990万人(2016年度)で人口は日本の1/12、面積は東京23区と同じくらいという日本と比較するととても小さい国家です。

「高福祉」や「高い教育水準」などで有名なスウェーデンですが、「IKEA」「VOLVO」「H&M」「Ericsson」などの世界的に有名な企業をいくつも排出しています。
古くはダイナマイトを発明した大実業家のアルフレッド・ノーベルの故郷でもあり、彼の名を取った「ノーベル賞」の授賞式は毎年12月にスウェーデンの首都ストックホルムで開催されていますね。

豊かな自然に囲まれたスウェーデンの街並みは美しいことで有名で、自然と調和したシンプルでナチュラルなデザインは「北欧スタイル」としても知られています。

「北欧スタイル」といえば雑貨、家具、住宅など、どれもお洒落で洗練されたデザインという印象があり非常に人気も高いですね。自然に囲まれ、お洒落な家具でコーディネートされた部屋の中でのんびりと暮らす生活スタイルは人々のあこがれでもあります。

「モノよりも生活スタイルを売る」IKEAのブランディング戦略

Ikea_logo

IKEA(イケア)はヨーロッパ・北米・アジア・オセアニアなど世界各地に出店している世界最大の家具量販店です。

日本国内では1号店のイケア船橋(その後現在の”IKEATokyo-Bay”に改名)が2006年に開業し、2017年7月末の現在では全国9店舗に拡大、今年秋には愛知県に10店舗目となる「IKEA 長久手」がオープンを控えています。

イケアに買い物に行ったことがある人であればよくご存じかと思いますが、イケアの特徴はまずとにかく広い!
3万~4万平方メートルとされる巨大な空間に家具を中心とした格安な商品が約1万点も並んでいます。

普通の家具量販店は椅子やテーブルなどの家具がただ並んでいるのが一般的だと思います。
しかし、イケア店舗ではイケアの家具でトータルコーディネートされたモデルルームがいくつも展示されています。その広大な敷地面積ゆえに可能な戦略ですね。

IKEA_showroom1 IKEA_showroom2 IKEA_showroom3画像参照:Feel KOBE “IKEA神戸”

イケアにとって売るのはただの椅子やテーブルなどの家具だけではありません。
お時間があればIKEAオンラインストアの方も覗いてみてください。リアル店舗以上にギャラリーページでたくさんの部屋のアイデアを紹介しています。

IKEA_OnlineSite_GarallyPageIKEAオンラインストア『ギャラリー』の一例

イケアが提案するのはただの家具ではなく、その家具によってもたらさせる空間、さらにいうと消費者の生活スタイルです。まさに「モノよりもコト」ですね。

IKEAはエンターテインメント施設

イケアの店舗は非常に広いというお話を先ほどしましたが、顧客の買い物体験のために施設自体にもイケアだからこそできる工夫がされています。

1.お子さまお預かりサービス「スモールランド」

イケアの店舗には「スモールランド」というスウェーデンの森をイメージした子供のためのプレイエリアが用意されています。ただのキッズスペースではなく「お子さまお預かりサービス」ですので、お父さんお母さんもゆっくりと買い物が楽しめます。

IKEA_SmallLandIKEAスモールランド
画像参照:北欧家具ブログ

2. スウェーデン料理をリーズナブルに提供するレストラン&カフェスペース

買い物に疲れたり、お腹が空いてきたらレストラン&カフェスペースで一休み。
家具や雑貨を売ることが目的なのでカフェテリアでの収益は特に求めていないのでしょう。ドリンクバーは120円(IKEAファミリーメンバーは平日60円)、シナモンロールは1個90円と、外食では通常考えられない値段設定です。

スペースも非常にお洒落ですし、ちょっと珍しいスウェーデン料理を試してみたり、ドリンクバーでドリンクも飲み放題ですので友達と行けばつい長居してしまうかもしれません。

IKEA_CafeteriaIKEAのレストラン&カフェ
画像参照:西馬込庵

子供のためのプレイエリアやレストラン&カフェスペースなど、家族でIKEAに出かけて丸一日だって過ごせる環境がイケアには整っています。

ファミリー層だけではなく、まだ一緒に暮らしてもいないカップルがどんな部屋にしたいか妄想デートを楽しむこともできますし、若い世代の友達同士でも楽しめるでしょう。イケアの家具は誰でも購入のしやすいリーズナブルな価格帯に設定されていますので、家族連れから一人暮らしを始める大学生まで幅広い層が利用できるのです。

イケアは「家具を買いに行く」のではなく、「イケアに1日遊びに行く」というただの買い物体験を超えたエンターテインメント体験を提供しています。イケアの店舗はただの家具屋ではなく、エンターテインメント施設なのです。

イケアの店舗は「モノ(物質的価値)よりもコト(体験的価値)」を見事にビジネスに取り入れた成功例です。

今回は「モノよりもコト」を実践している成功企業の例としてイケアについて解説しました。次回は文章量の都合上今回含めることができなかった、もう一つのスウェーデンを代表するグローバル企業、外国車メーカーの「VOLVO」におけるブランディング戦略の転換についてお話します。