前回の記事、『「モノよりもコト」に詳しくなる Part1 !スウェーデン発IKEA(イケア)のブランディング戦略』では、「モノよりもコトの時代」という現代のマーケティングにおいて非常に重要なキーワードをより深く理解するために、北欧スウェーデン発のグローバル企業「IKEA(イケア)」の事例をご紹介しました。

▼「モノよりもコト」の意味について詳しく知りたい方はコチラ
「モノよりもコトの時代」ってどういうこと?

今回は「モノ(機能的価値)よりもコト(体験的価値)」をさらに理解するために、スウェーデンのもう一つのグローバル企業、車メーカーの「VOLVO」のブランディング戦略について解説します。

VOLVO: 世界一安全な車

VOLVOは アッサール・ガブリエルソン、グスタフ・ラーソンらにより北欧スウェーデンで誕生し、1927年に乗用車の製造を開始しました。

日本輸入車組合が公表している統計情報によると昨年2016年の新車登録台数は第8位の15,357台でした。輸入車における全体のシェアは全体の4.43%で2015年の4.41%から0.02%伸ばしています。
ちなみに輸入車市場のトップ3は1位「Mercedes-Benz(メルセデスベンツ」、2位「BMW」、3位「VW(フォルクスワーゲン)」でいずれもドイツ生まれのブランドです。

みなさんは「VOLVO」と聞いて、どのようなことをイメージするでしょうか。

高級車としてのベンツ、「駆け抜ける喜び」をスローガンに掲げている走りのBMWなど、各外国車メーカーでそれぞれのブランドイメージを持っていますが、VOLVOと言えば「安全」というブランドイメージが定着しています。
例えば、現在どの車においても採用されている3点式シートベルトを開発したのはVOLVOです。

seat_belt_volvo1959年3点式シートベルトを開発した
ボルボのエンジニア、ニルス・ボーリン
画像参照:VOLVO Cars

VOLVOの「安全」というブランド・コンセプトを象徴する面白い動画があるので紹介します。昭和60年に公開された15秒のTVコマーシャルです。

高所から車を落下させてぐしゃぐしゃにするという「西部警察か!」と突っ込みたくなるようなシーンから始まるなかなか衝撃的なコマーシャルですね。

このようにVOLVOは「世界一安全な車であること」をブランド・コンセプトに据え、今日までそのコンセプトは一貫しています。
現在は”Vision 2020″という2020年までに新しいボルボ車での交通事故による死亡者や重傷者の数をゼロにする目標を掲げ、オートブレーキをはじめとするすべてのセーフティ機能がVOLVOの車には標準装備されています。

しかし、現在はVOLVOのもつ「安全神話」というブランドの強みも崩れつつあります。

加熱するセーフティ競争

人間が運転操作を行わなくとも自動で走行できる「自動走行車」の開発が熱を帯び、各メーカーが競って実用化への開発や実験を続けています。

VOLVOも自動走行車の開発を進め、すでに公道での実証実験の段階に入っていますが、TOYOTAや日産、ホンダ、スティーブ・ジョブズを超える男と呼ばれる天才イーロン・マスク率いるテスラ・モーターズなど、他のライバルメーカーも揃って自動運転の開発を進めているので競争は激化の一途をたどっています。
すでに凍結を発表しましたがテック・ジャイアントのGoogle社も自動走行車の研究を2016年まで続けていましたね。

ロックスターの矢沢永吉さんが自動走行している車に手離しで乗車している「やっちゃえ日産」コマーシャルは印象に残っている方も多いのではないでしょうか。

このように各社が安全性能を実現するためのテクノロジー開発に力を注ぐ中、VOLVOも「安全性」という機能を訴求するだけでは売りにくい時代へとなってきているのです。

VOLVO:理想的な北欧の生活スタイルの実現

「安全性」と共にVOLVOがアイデンティティとしているのが「北欧」というキーワードです。

外国車でトップを走るベンツ、BMW、VWらドイツ車との差別化やテクノロジー競争から脱するための手段として、「北欧の車」であることにVOLVOはポジショニングを置いています。

VOLVOの本拠地スウェーデンの人々は豊かな自然に囲まれた環境のもと、シンプルだが洗練された北欧デザインの家具やグッズを愛し、家族を愛し、休日にはピクニックやハイキングなどゆったりとした時間を過ごす生活を好んでいます。

VOLVOが提案するのは上記のような理想とも言える「北欧の生活スタイル」です。
それを車というツールを使って実現しようというのがVOLVOが掲げる機能訴求ではない「コト消費(体験)」重視のブランド・コンセプトです。
ここではVOLVOの「安全性」も「家族との幸せな日常を守るため」という文脈で語られます。

休日に、北欧を。Campaign画像参照:ボルボ・カーズ熊本

上記の画像はボルボ・カー・ジャパンが2014年に実施した『休日に、北欧を。』キャンペーンの画像です。
アウトドアを好む北欧流の上質な休日を日本でも体感して欲しいという意図でキャンペーンは展開されました。
キャンペーンの一環として、特設サイトでは北欧の生活スタイルを紹介する複数のスペシャルムービーが公開されました。

volvo campaign special movieキャンペーンで公開されたスペシャルムービー
(画像参照:Pinterest

この映像ではVOLVOの車のことなど一切説明されません。
動画はあくまで北欧の文化や生活スタイルの紹介メインで、登場人物が乗っている車がさりげなくVOLVOであるだけというスタイルがとられました。「モノよりもコト」というアイデアが実践された動画の事例です。

今回は「モノ(機能的価値)よりもコト(体験的価値)」の事例としてVOVLOの「安全性(機能的価値)よりも北欧スタイル(体験的価値)」について説明しました。

最後に、これまでの話をすべて踏まえたうえで今年2017年から公開されている以下のVOLVO公式動画をご覧ください。動画に込められたブランディング戦略に気づくようになっているはずです。