私たちの日常は常に様々な選択を求められています。

今日は何を食べよう、テレビは何を見よう、どんな服を買おう、どの車を買おうなどなど、すぐに選択できるものからしっかりと考える必要があるものまで大小さまざまな選択が人生にはありますね。

「選択する」という行為には脳のエネルギーを必要とします。私たち人間はできるだけ大脳のエネルギーを節約して使うように進化してきたため、いくつかの選択方法があるときには、最も少ない努力で選択をする傾向にあります。
これを「最小努力の法則」といいます。

「選択」はマーケティングにおいて最も重要な消費者行動ですので、さらに詳しく学んでいきましょう。
日常生活にも生かせる「好き」と「嫌い」に対する心の働きの違いについても後半で詳しく解説します。

二重過程理論(Dual-process theory)

消費者行動の基礎となる考え方のひとつに「二重過程理論」があります。
提唱したのはスタノビッチとウェストという2人の心理学者です。

二重過程理論によれば、私たちは日々「直感」と「推論」という2つの情報処理システムを使い分けて生活しています。

直感=システム1

二重過程理論では「直感」のことを「システム1」と呼んでいるのですが、システム1は「衝動的」で一瞬の判断や行動がそこから生まれてきます。迅速かつ自動的で脳の労力をほとんど必要としません。
システム1は知的努力(意識にかかるエネルギー)が必要ない一方で、ときとしてバイアスのかかった判断を下してしまうという欠点もあります。

例えば、美味しそうなお菓子を見つけて衝動的に買ってしまったというような経験はないでしょうか?
また、いつも使っている洗剤がセール価格になっていたので購入したり、日常的にカフェに行っていつものコーヒーを注文するような場合、このようなときには選択のためのエネルギーがほとんど必要ないシステム1の方を利用しているのです。

推論=システム2

衝動的なシステム1に対して、車や家などの高価な買い物をするときに無意識で衝動的に買ってしまうという人はいませんね。(いたらその人はなかなかヤバいと思います)
高価な買い物のときにはじっくりと吟味をして、理性的に考えてどれを買うかを選択しています。
このように私たちが”頭を使う”ときには「推論」または「システム2」と呼ばれる思考プロセスを利用しています。

日常私たちの頭脳は低レベルモードで働くようになっているのですが、デザインが気に入った3つの靴の中から購入する1足を選択したりとか、車を購入するのにかかるローンの複雑な計算を行ったりするときには、じっくりと物事を考えるシステム2が活躍しています。

何かを衝動的に購入しようとしたときに、ふと「本当にこれを買っていいの?」と心の声が聞こえたことがあると思いますが、それはシステム2の声なのです。
このようにシステム2は衝動的なシステム1を監視するという役割も担っています。

「好き」と「嫌い」の違い

ある研究によると「好き」と「嫌い」は必ずしも対照的ではないという結果が報告されています(Herr & Page [2004])。

「好き」という反応は自動的なシステム1なのに対し、「嫌い」という反応はより注意や思考を要するシステム2の思考プロセスを利用しています。

システム2の方がよく考えた結果の判断であることが多いため、システム2を利用する「嫌い」というネガティブな反応の方が、「好き」と言うポジティブな反応よりも、その後の情報処理に大きな影響を及ぼす傾向にあると考えられています。
言い換えると「嫌い」の反応の方が、消費行動や選択により大きな影響を及ぼすことになります。

悪事千里を走ると言いますが、良い評判よりも悪い評判の方が何倍も拡散されやすいとされています。
「嫌い」の感情の方が「好き」よりも人の行動に多くの影響を与えているということがわかりますね。

つまり、最初に「嫌い」と思われると、あとから「好き」にもっていくのは難しい!ということです。

恋愛マンガやドラマあるあるとして「第一印象は最悪だった異性のことをやがて好きになる」という王道パターンがありますが、現実は心理学的にその可能性は低いようですね(笑)

first_impression画像出典:笑うメディア クレイジー

よって、ビジネスにしても恋愛にしても、意識しなくてはならないことは、

まず最初に「好き」という反応を引き起こしておく、あるいは少なくとも「嫌い」とは思われないようにすることが重要であるということです。

第一印象で「好き」と思わせることがとにかく重要なのですね。

【参考資料】
『消費者行動理論』田中洋[著]