近年マーケティング業界では「アドボケイト(Advocate)」または「ブランドアドボケイト(Brand Advocate)」と呼ばれる人たちの重要性が強く認識されるようになってきています。

“Advocate”は日本語に翻訳すると「擁護者」や「推奨者」という意味です。
言葉通りブランドアドボケイトといえば「自分(自社)のブランドを推奨してくれる人」のことを指します。

もっとわかりやすく言いましょう。
アドボケイトとはあなたのことが大好きで、他人にもあなたのことを積極的に薦めてくれる人のことです。

アドボケイト(またはAdvocacyと言ったりもします)は世界でも注目を集めている最新のキーワードです。
実際、いま世界のマーケティングをリードしているアメリカのマルケト社が今年2017年に開催したサミットにおいて、マルケト社CMO(最高マーケティング責任者)のChandar Pattabhiram氏が「戦いを勝ち抜くための3つのA」と称して3つのキーワードを挙げ、その中の一つとして「Advocacy(擁護・支持)」の重要性について講演しています(私もその場で聴いていました)。

Marketo_Summit_2017戦いを勝ち抜くための3つのA(Marketing Nation Summit 2017にて)

伝統的にマーケティングの世界では「ファンを増やしましょう」ということが盛んに推奨されてきました。自分たちのサービスをよく利用してくれたり、売上に寄与してくれる優良顧客のことをマーケティング用語では「ロイヤルカスタマー」といいます。

アドボケイトは従来のファンやロイヤルカスタマーよりもさらに進んだ考え方です。
マーケティングのプロの間でもまだ徐々に広がりつつあるという段階ですので、書店で並んでいるマーケティングの入門書に記載はほとんどありません。

今回はそんな世界でもまだまだ新しいマーケティングの最新キーワードについて一緒に学びましょう。

時代は「信者」から「アドボケイト(擁護者)」へ

アドボケイトという考え方自体がまったく新しいものかというとそうではありません。

顧客をブランドへのロイヤリティ(忠誠心)の高さで分類する手法は古くからあり、マーケティングの世界では顧客の中でも特にブランドへの忠誠心が高い優良顧客のことを従来は「信者(believer)」と呼んでいました。

三省堂のオンライン辞典で”信者”の意味を調べると「ある宗教を信仰する人」と出てきます。
日常的には宗教に限らず「何かを盲目的に信じている人」という意味で使うことが多いと思います。
例としてApple社製品のユーザーには熱狂的な信者が多いことで知られています。
みなさんの周りにもいますよね、「あ、この人信者だわ…」って人(笑)

でも考えてみてください。「信者」って言葉、あんまりいい響きありませんよね。
消費者が「信者」であるならば、提供者側(企業)は「教祖様」ってこと?って思いませんか。

「ロイヤルカスタマー」や「信者」という言葉は提供者側が消費者側につける上から下へのレッテルに対して、「アドボケイト(擁護者)」は情熱を持ってブランドを愛し利用してくれる人。提供者と消費者の横のつながり、言い換えると「自分たちの大切な仲間・理解者」というニュアンスの違いがあります。

「信者(もしくはファン)」から「アドボケイト(擁護者)」へと移り変わってきている理由には社会やマーケティング環境の変化が挙げられます。

つながる時代のマーケティング

高度成長期と呼ばれた昔は生産者主導でしたので提供する側の方が強く、消費者の立場はいまよりもずっと弱いものでした。
しかし、現在は消費者を中心とした消費者主体のマーケティングへと社会が変わってきています。

特にスマホの普及によってインターネットにいつでもどこでもすぐにつながるようになったことやソーシャルメディアの発展は消費者に大いなる力を授けました。
悪いことをすればネットやソーシャルメディアですぐに広まります。もはや提供者側も以前のようなごまかしや欺瞞が通じる時代ではなくなりました。

今日私たちの購買意思決定は他者の意見に大きく左右されると言われています。

2016年3月に第一生命保険がまとめた「企業と消費者のコミュニケーション」調査によると、消費者は製品やサービス、店舗などに対して気になることや不満を感じた場合、また反対に満足したり嬉しい思いをした場合にも、企業や店舗に直接伝えるよりも「家族や友人・知人」に伝える傾向にあることがわかりました。

参考:関東・関西在住の 20~69 歳の男女 2,000 名に聞いた『企業と消費者のコミュニケーション』

何か気になる商品があったときには写真を撮って友人にLINEでアドバイスを求めたり、FacebookやInstagramの投稿で気になるものをメモリーしておいたり、外食の際には食べログの口コミを参考にしたり、注意して日常を観察してみると自分の消費生活の中に「他人の意見」が深く関わってくることに気づくのではないでしょうか。

あまり認めたくはないかもしれませんが、最終的には自分の考えで決定しているように見えて、実は個人的な意思決定は昔に比べてずっと社会的な意思決定に影響されているのです。

マーケティングの3大巨匠として著名なノースウェスタン大学のコトラー教授はインターネットやSNSの普及によってこのように個人と社会が密接に関わっている現在のマーケティング環境を「つながった世界(connected world)」や「接続性(connectivity)」という言葉で表現しています。

このように、かつてなく家族や友人・知人の意見が個人の行動に影響を与える接続性の時代において、自分たちのブランドを推奨してくれる味方の存在は何よりも代えがたく大切です。

以前、現代を象徴するマーケティングキーワードとして「コ・クリエーション(共創)」(消費者と「共」に「創る」)という考え方と事例を紹介しました。

参考:Facebook Liveで200万ビューを記録したドイツのプロモーション成功事例。コ・クリエーションで新たなイノベーションを作りだせ

マーケティングの流れは生産者が提供したものを消費者が使用する「縦の関係」から、提供者と消費者が仲間として協力し合う「横の関係」へと移り変わっています。

「信者」や「ロイヤルカスタマー」を増やそうと頑張っているみなさん。今こそ「アドボケイト」を増やそうという考え方にマインドチェンジしてみてはいかがでしょうか。