誰かに親切にしてもらったり、プレゼントなどを受けとったときには、その恩恵を与えてくれた人に対して何か似たような形でお礼をしなくてはいけないという気持ちになりますね。

心理学では、このように受けた恩恵に対してお返しをしなくてはならないと思う心の働きを「返報性(へんぽうせい:reciprocity)」と呼びます。

返報性はコミュニケーションにおいても、ビジネスにおいても非常に重要となる心理のひとつです。

例えば、スーパーの試食品コーナーで試食をするとその商品を買わなくてはならないという気分になりませんか?
特に店員の方から「美味しいでしょう?」なんて尋ねられたときにはもう最悪です(笑)。
買わないでそのまま行こうとすると少し後ろめたい気持ちになりますね。

今年2017年10月16日から20日までの五日間、マクドナルドではコーヒーSサイズが無料になるキャンペーンを実施したのですがご利用された方はいますでしょうか。

McCafe_Campaign画像参照:マクドナルド公式サイト

無料になるとはいえ、コーヒーだけを注文することはなかなか勇気がいる行為だと思います。
大部分の方は他のメニューと合わせて注文するはずですね。
「コーヒー無料」という好意に対して、他の商品を購入することでお返しをしているわけです。

これも返報性という人間心理を利用したキャンペーンの一例といえるでしょう。

このように特定の商材を無料にするというキャンペーンは、その商品を試してもらい次回オーダーをもらうためのプロモーション効果と共に、「コーヒー無料だからマクドナルドにでも行こうかな」という消費者に足を運んでもらうための動機づけという二つの効果が見込まれます。

また、マーケティングだけではなく、営業のテクニックとしても返報性は頻繁に利用されています。
返報性の特徴を応用した有名な技法をひとつご紹介しましょう。

ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック

ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック(The door in the face technique)は、「人は誰かの要求を拒否すると、断ってしまった後ろめたさを感じるため、次にそれよりも小さな要求を申し出られたときに容易にそれを受け入れてしまう傾向がある」という人間心理を利用した営業テクニックです。

依頼や交渉の際、最初に過大な要求を出して相手に一旦拒否させておき、それから徐々に要求水準を下げていく話法のことで、一度ないし複数回相手に断らせることによって、そのお返しとして相手が承諾してしまう流れを作り出し、最終的にこちらの要求を承諾するよう相手を導く効果があります。

「ドア・イン・ザ・フェイス」という名称は、訪問販売のセールスマンがひとまず相手に拒否させるために、ドアが開いたらいきなり顔を突っ込む動作に由来しています。

shining_the_door_in_the_faceホラー映画の名作『シャイニング』の有名シーン
ドア・イン・ザ・フェイスなジャック・ニコルソン
(画像出典:www.alcohollywood.com

いきなり拒否させるようなことをしておいて人の心理をコントロールしてくるなんてセールスマン「怖っ!!」って思いますね。

お年寄りへの詐欺被害が社会問題となっていますが、詐欺師はこのような心理テクニックを駆使して物を売りつけてくるので、最初は警戒していた人も気づかぬうちに購入するように巧妙に誘導されてしまうのです。

ビジネスの商談においてもまずは高い金額を提示しておき、一度高いと拒否された後に交渉を重ねながら徐々に金額を下げていくのが定石となっていますね。

コミュニケーションへの応用

女性のみなさんご注意ください。
ナンパ師は「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」をつかって以下のような会話であなたとLINEでつながろうとしてくるかもしれません。

男「君かわいいね。俺と付き合ってよ」
女「嫌よ」
男「じゃあ、友達からどう?」
女「え~どうしようかな~」
男「それじゃあ、せめてLINE教えてよ」
女「…まあ、それくらいなら」

ナンパの場面に限ったことではなく、まずは過大な要求からスタートして徐々に要求レベルを下げていく「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」は日常生活の様々な場面で利用できることでしょう。

また、相手との信頼関係を築くためや本音を引き出すためのコミュニケーションの手段として「自己開示」が有効であると言われています。

「自己開示」とは読んで字のごとく、自己を開示して自分自身のことをありのまま相手に伝えることです。
円滑なコミュニケーションのためにまずは自分がどういう人間なのか、どんなことが好きで、何が嫌いなのかといった自分自身のことをありのまま伝えることが大切です。

「自分自身のことを明かす」ことで、相手は返報性の心理が働き、「この人は私を信頼してこんなに自分自身のことを明かしてくれている、だから私もお返しに心を開いて自分のことを伝えなくちゃ」という気持ちになります。これを社会心理学では「好意の返報性」と呼びます。

まったく自分のことを明かしてくれないような謎の相手を信頼することは難しいですよね。

自分が相手を信頼して心を開き、自己開示をするからこそ、相手もあなたのことを信頼して心を開いてくれるのです。

コミュニケーションが上手な人は自己開示も上手な人です。
「返報性」を意識して、まずはあなたの方から少しありのままの自分について話してみてはいかがでしょうか。