大塚食品が発売するレトルトカレー「ボンカレー」のことはみなさんご存じですね。
誰もが一度は食べてことがあると思います。美味しいですよね、ボンカレー。

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世界初の市販用レトルトカレーとして1968年に誕生したボンカレーは、当時はカレーがまだ洋食の代表としてごちそうであった時代に「一人前入りで、お湯で温めるだけで食べられるカレー、誰でも失敗しないカレー」というコンセプトで開発されました。

お湯で3分間温めるだけという手軽さに加えて、当時はまだ牛肉が高価で「牛肉100%なんて夢のような贅沢!」と思われていた時代に牛肉100%にこだわり、とっておきのごちそうメニューとして食卓に提供されました。
画期的な商品であったので最初は苦労をしたようですが、営業努力の甲斐もあって徐々に人気を獲得し、発売から5年後の1973年には年間販売数量1億食を達成します。

発売から49年が経った現在では、誰でも知っている国民的なレトルトフードとなっていますね。

さて、そんな認知も非常に高く世間一般に浸透しているボンカレーですが、最近テレビ・コマーシャルで見かけなくなっています。

実は、2013年に発売45周年を迎えて以降、ボンカレーはテレビCMから撤退しているのです。
言われてみれば最近ボンカレーのCMを見た記憶はないですよね。

予算を減らされて広告への出稿量が減少すると、売り上げも下がり、また広告宣伝費も減らされていくという負のスパイラスに陥るのがふつうです。
CMの露出量を減らしたということは、ボンカレーも売り上げが落ちているの?というとそんなことはなく、広告宣伝費を6割減らしたにもかかわらず、それでも売り上げは微増で推移しているそうです。

なぜボンカレーは広告から撤退したのか、そしてなぜボンカレーの売り上げは落ちないのか、現在の「コトよりもモノの時代」を象徴する良質なマーケティング事例としてご紹介します。

読み終わる時には「ブランディング」とは何かについてより理解が深まっているはずです。

ボンカレーは誰を救えるのか?

テレビCMから撤退した理由を大塚食品製品部レトルト担当プロダクトマネジャーの垣内壮平氏は以下のように説明しています。

アンケート調査をすると、ボンカレーの認知率は9割を超えている。テレビCMは新商品を広くアピールするには向いているが、15秒や30秒では生活者にとってボンカレーがどういう存在でありたいか、メッセージを伝えることは難しい。そこで今までの広告宣伝スタイルを見直し、PR中心で進めていこうと方向転換を図った。(引用元:日経ビジネス

テレビCMから撤退した大塚食品は代わりとして、Youtubeを活用する決断をします。Youtubeの動画が流れる前に表示されるコマーシャルであれば数分間の長尺も可能だからです。

以下は2014年に公開されたのボンカレーのコマーシャル動画「ねえ、お母さん」篇です。

動画のターゲットは「ボンカレーは誰を救えるのか」を突き詰めた結果、共働き率が高まりながらも家事負担がなかなか軽減しないワーキングママに設定されました。

女性の社会進出が進み、労働力人口総数に占める女性の割合は年々増加しています。平成27年度には全労働者のうち43.1%が女性という統計データが総務省の調査によって公表されました。(参照元:厚生労働省

仕事で毎日疲れてはいるけれども、家事も育児もこなさなくてはならない。そんな「ワークングママを救いたい」と動画に込められたボンカレーのメッセージは明確です。キャッチコピーは「家族の笑顔をつないでいく」。

以下の動画はいまから18年前の1999年に公開されたボンカレーのテレビCMです。ともさかりえさん懐かしいですね。

2つの動画を比較すると違いは明確です。

1999年のコマーシャルでは、スポーツなどでお腹が空いたとき、すぐに栄養満点のカレーを食べれるというボンカレーの機能を訴求しているのに対して、2014年のコマーシャルで訴求しているのはボンカレーによって守ることができる「あたたかい家庭、家族の絆」といった顧客体験です。

当ブログでも以前、現在は「モノ(機能的価値)よりもコト(体験的価値)」をより重要視する時代だということを解説させていただきました。
大塚商品のコマーシャルはまさに「モノよりもコト」を体現した素晴らしい動画だと思います。

▼「モノよりもコト」の意味をご存じない方はコチラ
「モノよりもコトの時代」ってどういうこと?

このような明確なターゲット、明確なメッセージが支持を集め、「ねえ、お母さん篇」の動画閲覧回数は2017年10月末現在、すでに100万回再生を超えています。

コーポレート・スローガンとブランディング

企業が社会に対して果たそうとする内容を簡潔な言葉で表現した文章を「コーポレート・スローガン」と言います。コーポレート・スローガンは従業員の意識やマーケティング・メッセージなどの屋台骨となるまさに企業の柱です。

大塚食品のウェブサイトで公開されているコーポレート・スローガンは「大切な人にずっと元気でいてほしいから」です。

いかがでしょうか?

「大切な人にずっと元気でいてほしいから」「家族の笑顔をつないでいく」、そしてワーキングママを救いたい。

すべてのメッセージ(点と点)が1つの線として一本につながっていることがおわかりいただけるのではないでしょうか。本に書いてあるような小難しい定義や説明は不要ですね。これが「ブランディング」というものです。

今回の事例には何よりも重要なマーケティングの問いかけ(命題)がありましたね。
マーケティングやブランディングを考えるとき、私たちはまずこのことを自分たちに問うべきなのです。

あなたは誰を救いたいですか?

 

【参考サイト】
ボンカレー公式サイト
大塚食品ウェブサイト
日経ビジネスONLINE