コンビニやスーパーで気軽に買うことができるチョコレート製品。
これらの商品をつくるために、今日でもなお、200万人以上の子どもたちがカカオ農園で賃金ももらえず、奴隷のように強制的に働かされているという衝撃の事実をみなさんはご存じでしょうか。

カカオ産業は世界で年間1000億ドル以上の価値を生み出すと言われています。
チョコレートやココアなどの原材料であるカカオ豆の約7割は西アフリカのガーナ、カメルーン、コートジボワール、ナイジェリアの4か国で生産されています。

しかし、これらのカカオ生産国では、人身売買などでカカオ農園に連れてこられた子供たちが賃金ももらえず、奴隷のように強制的に働かされ、農園から出ることも家族と連絡を取ることさえも許されない過酷な環境で労働を強いられているという状況が常態化されています。

youtube_boy3「賃金は支払われず、強制的に働かされていた」と証言する少年
Tony’s Chocolonely Youtube動画より抜粋)

youtube_boy2「強制的に働かされ、農園を離れることは許されなかった」と証言する少年
Tony’s Chocolonely Youtube動画より抜粋)

この事実に衝撃を受けたひとりのオランダ人ジャーナリストは自ら会社を設立し、児童の強制労働を撲滅しようと立ち上がりました。

今回は巨大なチョコレート産業に立ち向かう、小さな企業による挑戦の物語をお伝えします。

オランダ生まれのTony’s Chocolonely

オランダ人ジャーナリスト Teun van de keuken(英語名 Tony)氏は、児童強制労働の実態を世間に訴えるため2004年「自動奴隷によって栽培されたカカオを原料としたチョコレートを食べた自分は有罪である」として自身を提訴しました。

しかし、訴えは不起訴処分となってしまいます。

その後、大手チョコレートメーカーに奴隷を使用していないカカオの利用を働きかけるのですが、どのメーカーも興味を示さず失敗。

そこで2005年、自らTony’s Chocolonely(トニーズ・チョコロンリー)という会社を立ち上げ、奴隷を使っていないフェアトレード(※)のカカオを使って5000本のチョコレートバーを生産しました。強制的に働かされている児童が介在していない正真正銘100% Slave freeのチョコレートです。

※フェアトレードとは発展途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することを通じ、立場の弱い途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す運動やそのための公平な取引のことです。

Tony-s-Chocolonely-Chocobar画像参照:expats HAARLEM

チョコレートバーのデザインにもブランドのコンセプトが一貫して継承されていて、この不揃いな形は「世界の不平等」を表しています。この事実を消費者に常に思い起こさせるというブランドからのメッセージです。

初めて生産した5000本のチョコレートバーは、自身の告訴や、児童奴隷解放を求めた行動が話題を呼び、あっという間に完売しました。
そして現在もトニーズ・チョコロンリー社のチョコレートバーはオランダをはじめ、欧米で人気を博しているそうです。

tonys_chocolonelyオランダでは多くのスーパーやキオスクで買うことができるらしい
(画像参照:Mooi Holland Note


Tony’s Chocolonely – the story of an unusual chocolate bar

巨大なチョコレート産業に挑む、まだできたばかりの小さな企業ですが、すごく応援したい気分になりますよね。

私たちは社会に対して何ができるのか

世界三大マーケターの一人、「近代マーケティングの父」や「マーケティングの神様」と評されるフィリップ・コトラー氏は著書の中で、現在の低成長時代に勝ち残るための8つの成長戦略のひとつとして「社会的責任に対する評判を高めて成長する方法」を挙げています。

今日では、どの会社も企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility:CSR)を無視することはできません。

ブランドを形成するのは製品の品質や価格、イノベーティブ(革新的)な発想だけではありません。広告調査財団のジョセフ・プランマー博士は「企業の評判は信念と信頼だ。片方だけではなく両方が必要なのだ」と述べています。

自分たちのブランドにこうなってほしいと強く願うイメージを、はっきりと説明したものを「ブランド・ビジョン」と言います。ブランド・ビジョンはすべてのマーケティングや販売活動の方向を決定づけるブランドの柱です。
自分たちが社会に対してどのような価値や意義を提供しようとしているのか、自分たちの信念をきっちりと相手に伝えることができ、そしてその理念が世間に認められることで信頼を得ることができるのです。

私たちは労働をしたいわけではありませんよね。
きっと多くの人が「この世界をより良くしたい」と思い働いているはずです。

では、その価値や意義は何なのか。私たちが社会に対して何ができるのか。
揺るがない信念を形成することが重要なのです。

最後にトニーズ・チョコロンリーCCO(最高チョコレート責任者)のヘンク・ヤン・ベルトマン氏のインタビューより引用します。

他社も私たちと同じ方法でビジネスをせざるを得ないように、できる限り強く働きかけるつもりです。
奴隷を使ってできたチョコレートを食べたいなんて思う人は、世界中に誰一人いませんからね

by Henk Jan Beltman Chief Chocolate Officer , Tony’s Chocolonely  (June 2, 2017 CNN Interview)

この会社、信念やビジョンが本当にはっきりしていますね。
まだ日本では買うことはできないようですが、もし日本でも発売されることがあれば個人的にはぜひ応援していきたいと思います。

チョコレートのために児童の人身売買や強制労働が行われている現実や、児童の強制労働を撲滅しようと奮闘するこの勇敢な企業の挑戦を広めていきたいですので、ぜひ共感された方はシェアいただけますと幸いです。

参考:
Tony’s Chocolonely Web site
Mooi Holland Note
CNN English Express 11月号(朝日出版社)
Header画像参照:Frankwatching